話が細かくなった。吉村設計事務所にはマージンという観念が皆無であった。新しく現れたメーカーが、打ち合わせの後「ところでお宅の事務所のマージンは何％ですか」と言った。「え？ゼロですよ。普通は何％なんですか」「3％くらいでしょう」「じゃｱその中の1.5％は施主に還元してください。残りの1.5％はおたくに上げますよ」と答えた。設計料をいただいているのですから。そのかわり、譲歩しない立場が確立し、設計者の責任ある仕事が出来る。それが、うまく伝わらない相手の場合は実に悲しい。設計は建て主の意見を十分聞き、双方が満足するものを作る。現場は施工者の意見を十分に聞き、よりよい施工を実現する。竣工したあとも、建て主とは十分に連絡を取り合い、意見を交換して保守に努める。そのような仕事の全体の中にマージンがあってはならないと思う。

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