奥村まことのブログ 吉村順三先生に学んで

 

吉村設計事務所には松村勝男さんという優秀な家具デザイナーがいたのだが、彼が独立した後ホテルの仕事が来た。先生に「君、家具の設計をしないか」と言われ二の足を踏んだ。建築の設計に戻れなくなると大変と思ったのである。先生が「大丈夫だよ。僕だって両方やってるんだから」と言われて納得した。さア大変。椅子は試作を何回やれば「出来た」ということになるかわからない。小田原君という優秀な家具職人(今は立派な家具デザイナー)は1ケ月のうちに7回試作を作ってくれて、ゆったりとした食堂椅子が出来た。椅子張りの織物は摩耗試験や褪色試験を経て西陣で完成した。プールサイドのパラソルは傘作りの名人と一緒に考えて真四角なのが出来た。人に一番身近な椅子の掛け心地をとおして、住宅の空間設計も出来るのだ、と思った。

椅子

2012年5月28日