奥村まことのブログ 吉村順三先生に学んで

 

庭を見る家

2013年10月25日

北の庭が、江戸時代明治時代の立派な家の、座敷の庭であったのは、花がこっちを向いて咲くからである。東の花は夕日に映え、西の花は朝日に応える。朝早く香る、しで桜の色が長波長で白く透き通る。ここはキョロキョロしないでまっすぐ歩いてもらいたいが、ここまで来たら立ち止まって庭を見てほしい、という場所にはそれなりの石が据えられ、ほっと一息立ち止まる。あの大きな景色を見るには玄関から入った床の高さから一段二段三段下がりながら見ると、南の軒の庇の線がすこしずつ上がって、大きな空が更に広がる。ここの廊下を曲がる時、右側の足元に窓があれば、そこから見える壺庭がいかにもかわいらしい。台所からおいしいにおいがやってくる食堂の窓は、季節の花や鳥の姿が見える高さにあってほしい。いつも仕事しているときに見える景色は、遠いほうがいい。などと、景色は家の設計を助けてくださる大切な先生である。