奥村まことのブログ 吉村順三先生に学んで

 

物語

2013年8月1日

芸大建築科の後輩で、蝶に凝っている人が居る。凝っているのではない、蝶と友達なのだ。捕虫網を持つと及び腰になるが、それはまたラガーの腰つきでもある。毎年撮った写真でカレンダーを作る。月の満ち干も書いてある。蝶の世ではそれが大切なのであろう。そのカレンダーはもう10年以上続いている。美しい風景にひそかに蝶がいる。ある時は近代的なビルが背景にあったりする。蝶と自然がうまく折り合っている。ホッとする一コマである。ところが、今年のは、少し違うのだ。美しさではなく、そこに「物語」がある。奥行きもぐっと深まった。彼の中でなにが起こったのだろう。そういえば建築だって絵画だって彫刻だって音楽だって、そうだ。美しさは格別であるが、それだけではない。物語があるのだ。さまざまな思いがそれぞれの人の心に何かをくれる。自然も、くれる。ありがたいことだ。