キャンパスマスタープラン花盛り
キャンパスマスタープラン花盛り
2012/07/26
東京芸術大学名誉教授 奥村 昭雄
ためしにネットで「キャンパスマスタープラン2011」を検索すると、6ツの大学が出ていた(註.)。2011だけで6ツもあるのだから、2010以前のものを加えると、もっと沢山あるのだろう。教育の場である大学が、法人となり、経営効果が重要視されるようになったことが、このような「大学キャンパスの建て替え」という流行をつくり出した。建設業界としては喜ばしいことであり、「花盛り」という形容がふさわしい。
愛知芸大が、まさか流行を追って建て替えをしようとしたとは思わないが、社会的現象として客観的にみれば頷ける。若ものは、こぞって新しいキャンパスでの生活を夢見て、将来の自分の姿を新しいキャンパスに重ねあわせる。学生の溢れるキャンパスは教員の将来にも希望を与える。なにも文句をいうことではなく、すばらしい。
そこで私としては、自分にいささか関係のある「愛知県立芸術大学のキャンパスマスタープラン2011」についての意見を述べて見たい。一番気になるのは「言葉で継承する」という考え方だ。あくまで「自然の申すところ」に従ってほしい、と私は思う。自然は大きな声で意見を言っているし、芸術はそれを聞く耳を持つもの、である筈だから。
大学は、2010年7月~2011年3月に12回の検討会を、2011年9月~2012年2月に4回の委員会を開いて各界の意見を集め、それらを「参考」にして2012年の3月、県にこの「マスタープラン2011」を提出した。新音楽学部棟の建設はこれより早く2011年11月に発注され、2012年に工事が始まっている。形式はあとからで、実行が先んじている。要するに建てたいのであった。マスタープランと言う名の建設計画が全国的に展開されていることに注目したい。
設計を仕事とする者にとって、自分の行動が社会に役立っているかどうか、反省する機会が与えられている。私はそれを果たせないことを恥じる。後続の若い建築家の皆さんにこの仕事を託したい。
(註).富山大学・千葉大学・山口大学・奈良先端科学技術大学院大学・群馬大学・
愛知県立芸術大学