愛知県県民生活部長への公開質問状

2011/03/25

平成23年3月25日

開 質 問 状


愛知県県民生活部長 大久保裕司 殿


愛知県立芸術大学について下記にお答え下さい。

緑豊かな愛知芸大のキャンパスを活かしていこう会

代表 近藤高史


1)行革大綱

平成23年2月に全学生への施設整備の説明会があり、水津功美術学部施設整備委員より、 「県は、愛知県立芸術大学の法人化の前に、大学改革室より行革大綱により旧女子寮は福利厚生施設なので持てないと言われ、そして法人化後は行革大綱の福利厚生施設には当たらないので女子寮は持てると全く逆の説明をしている。」との主旨の説明がありました。県は、いつ話を変え、何を根拠に話を変えることをしたのかお答え下さい。


2)旧女子寮

平成23年3月9日の県議会で富田昭雄議員の質問に対し、貴殿は「法人は旧女子寮を他の用途に利用する目途がないとして、平成22年3月31日県に返還した」と説明されました。

しかし学内では、平成22年3月解体の議会承認がおりた後、6月10日(木)の昼休みに大学が初めて開いた全学教員説明会で教員達から転用の要望が出されており、また在学生達には新学生寮への移動後10ヶ月たった今年の2月になって初めて今まで施設整備の計画について学校がやってきたことが告げられ、そこで驚いた学生達も転用希望の案を出しました。

また貴殿は3月9日、「県は改修も維持も相当な費用がかかるので女子寮を壊すことにした」と答弁されましたが、県民生活部学事振興課の3人の担当の方々は下記の説明をされています。


平成22年4月16日 前学事振興課 後藤由起夫氏:

今の女子寮は使うつもりはない とのことで、廃止が決まっていたのでお金を出せなかった。使うなら県は改修  して出資する。撤去して下さいと言われれば、県が壊す。


平成22年4月16日 学事振興課課長補佐 丹羽信昭氏:

女子寮を法人で確保したの  で、古い女子寮は必要がなくなったという報告が法人からあった。建物は、県 が法人が使える状態にしてから、法人に出資する。土地は法人にその管理・ 使用をまかせている。


平成22年6月2日 学事振興課山下氏:

女子寮は職員のものでなく、県の福利厚正施  設にはあたりません。法人が今の2人部屋・4人部屋を1人の個人部屋にしたいとのこと。今のは天井が低いので使えない。天井が低く部屋が狭いので 別の用途にも使えない。寮は必要だが、個人部屋のある現代的なものを大学 がほしいとのと。今のはもういりませんとのこと。使っていただけないものは壊すしかない。法人化で建物は直して渡すことになっており、期限はない。土地は既に法人のものになっている。


平成22年6月3日 前学事振興課 後藤由起夫氏:

女子寮の耐震調査をしたようです。私は平成20・21年度のみ担当した。


この担当の皆さんのお話から、大学が希望する新しい寮を法人が用意したので、旧女子寮はもういらないとのことで県が壊すことになった。法人が県に県税を使って壊すよう迫ってきているのがその実状ではないでしょうか。貴殿の説明には洩れがあると思われます。説明してください。


3)旧女子寮解体の経緯

富田昭雄議員の質問に、貴殿は「解体費では改修は無理」との説明をされましたが、どう再利用するかで、解体費でも十分使うことが可能であります。貴殿が答弁で言われた「新音楽棟工事のための資材置き場、工事事務所にするために解体を決めた」ということについて、平成21年8月21日、県立芸術大学施設整備委員会委員長の長谷高史教授と株式会社日建設計の若林亮氏、富樫亮氏が奥村昭雄を訪ねて来られたときには、「次の展開をするための種にするという意味で、女子寮を壊して種地にする。空地にしておいて次の建物を建てるときに利用する。」との旨の説明をされました。また平成22年6月16日、中日新聞の「隠し計上」記事(資料1)で問題になったときも、丹羽信昭課長補佐が「学生寮は解体後に新音楽学部棟工事の際に資材置き場にする予定なので、音楽学部棟整備費(実施設計)に入れた。議会に説明していないが、隠そうとしたわけではない。より分かりやすく書けば良かったと反省している。」と言われたとのこと。その後の施設整備ビジョン検討会でも、たびたび「新音楽学部棟工事のための資材置き場、工事事務所にする」と説明がなされております。工事の資材置き場、工事事務所にするという理由であれば、これだけ広い敷地ですので、わざわざ転用希望のあるまだまだ使える県民資産を捨て去ってまでやる必要はないと思われます。貴殿が敢えて言われた「新音楽棟工事のための資材置き場、工事事務所にするために解体を決めた」という経緯を説明してください。

*(資料1)の記事については、「緑豊かな愛知芸大のキャンパスを活かしていこう会へお問い合わせください。


4)法人への出資

平成21年8月21日、県立芸術大学施設整備委員会委員長の長谷高史教授が株式会社日建設計を連れて奥村昭雄を訪ね、「女子寮は2人部屋と4人部屋で個室がなく、天井も低いので新しいのが必要」という旨の話をされ、学生寮は個人部屋にし、天井も高くし、今の時代に合うものがいいとのことで建て替えますとのことでした。愛知県公立大学法人(清水哲太理事長)は株式会社セキスイに土地造成だけを先ず発注(資料2)し、そこに新学生寮を株式会社セキスイに作らせて、それを借りて平成22年4月より使い出し、旧寮はいらないので県に返しました。遂に県は耐震上も問題がない(資料3)と判明した資産を、壊さざるを得なくなったと思われます。

平成19年4月に法人に引き渡すに当たって、土地はすべて法人のものになったのですが、建物については、壊すも、直すも、増築するも、ましてや建て替えるのも法人の意のままに、すべては無期限にひとつづつこなして、県から法人に手渡し出資してゆくことになったわけです。

そこで真っ先に大学は音楽学部棟だけやるとして、他は敢えて白紙にしてその新築を県に要請し、県は法人化した以上引き渡すしかありませんから、県財政の中でできる時にひとつづつ対応するしかなく、全体計画を作ってそれにもとづいてやるべきところを、法人の言うがままにさせられているのが実状だと思われます。法人と県とでどういう話し合いをしてきたのか、説明してください。

*(資料2)については、愛知県のHPからダウンロードできます。


5)全面改築案で工事費250億円

貴殿は同3月9日の議会で、「全面改築案で工事費250億円」と言われましたが、質問された富田昭雄議員は「250億」ではなく、「280億」と質問されています。「250億」という金額が巷に伝わり、「280億」という話が前神田知事のところにいったとき、知事はびっくりされたと聞いていますが、貴殿がわざわざ数字を変えられる「250億」の根拠を示してください。「ある教授」である愛知県立芸術大学施設整備委員会委員長の長谷高史教授は、2009年8月21日、株式会社日建設計を連れて奥村昭雄を訪ねた時、「280億の概算が出た」とはっきり説明をされています。


6)一期、二期、三期工事

貴殿は同3月9日の議会で、「一期、二期、三期、四期に分けて、分けるならOK。それで先ず一期の30億は決まったとのことでありますが、本県としてはこうした荒唐無稽ともいえる事実について全く承知をしていない」(富田昭雄議員の質問の「四期」はなく正しくは一期〜三期の模様)と答弁されましたが、芸術大学施設整備委員会委員長の長谷高史教授は平成21年10月の同窓会誌資料4)に「これから10年を目処に三期に分けて順次整備を行っていきます。一期では音楽学部棟及び講義棟、学生会館を整備します。その間に学生寮を撤去し種地を確保します。二期目では美術学部各棟、美術館、及び図書館改修。三期目にはコンサートホール、音楽学部施設、他の大学施設を順次建設改修を行っていく計画です。」と発表されました。また貴殿が指示された施設整備ビジョン検討会に於ける竹内弘明県立芸術大学事務局長の発言では、「第一期は平成24年までに音楽学部棟、講義棟・大学会館を新築する計画」と説明されています。その上県民生活部が平成20年3月31日に発表した「緊急整備対応指針」そのものにも「第1次整備期間は、平成20〜24年の5年とする」と同じ期間で明記されています。さらに平成21年8月21日、長谷高史教授は株式会社日建設計とともに奥村昭雄を訪ねた折、「280億は県はすぐには認めてくれないが、一期、二期、三期工事に分けるのは一応OKになっている。一期のうちの30億位だと思うが、新音楽棟の新設工事の予算措置をするための基本設計を今年度やる」とここでも表明されています。「本県としてはこうした荒唐無稽ともいえる事実について全く承知をしていない」との答弁は虚偽であり、これだけ各所で県職員の人々が表明されており、またこれだけ学内学外で混乱を生む結果になっていますので、貴殿にはその説明責任があると思われます。真実を説明してください。



7)「芸術大学整備マスタープラン」と新音楽学部棟校舎の計画位置

今回の新音楽学部棟建設位置は、法人が株式会社日建設計を雇って作成し、平成20年3月11日に県に提出した「芸術大学整備マスタープラン」(資料5)と全く同じ位置に計画されており、同社は大学から多額の作成業務費(金額不明)を得て作った案を使って、今度は基本設計担当者を選ぶ5社の県の入札に出席し、誰が見ても有利な状況で、尚且つ「芸術大学整備マスタープラン」と同じ新音楽学部校舎の方針(資料6)でその基本設計を、今度は県から受注しています。 本計画位置が、大学法人が平成20年3月11日に県に提出したマスタープランの位置と一致していることは明らかであります。また平成21年1月9日に愛知県立芸術大学施設整備委員会委員長の長谷高史教授が奥村昭雄を初めて訪ね提示された、26,612千円の基本設計発注予算額を開示する県民生活部学事振興課の県内部文書(資料7)に書かれた計画位置も、同一場所として図入りで表示されています。すなわち新音学学部棟を管理棟の東斜面に建てることは、平成21年1月までに県と大学との間で決めていたことを、この県内部文書が明確に裏付けております。

平成22年7月26日、第3回施設整備ビジョン検討会で芸術大学施設整備委員会委員長の長谷高史教授が、平成22年2月19日に吉村順三記念ギャラリー代表吉村隆子氏が神田真秋愛知県知事に署名提出に伺った折の県内部で出回っている文書(資料8)だと言って、私に提示された資料には、その折高尾副知事の説明に付け加えられた貴殿の発言が省かれています。その折貴殿は「大学法人が2008年3月11日に県に提出したマスタープランは今のマスタープランでない。」と言われています。

貴殿は平成22年3月10日の県議会で富田昭雄議員の質問に、法人が作ったマスタープランは「認知したものでなく、今回の音楽学部校舎の整備もそれにもとづき進めているものでない」と答弁されましたが、緊急に必要という理由を付けて「緊急整備対応指針」を作り、大学の要望する新音楽学部棟を今の場所に建てることを県が認めたことは事実であります。県が独自に決めた新音楽棟校舎計画ではなく、大学が日建設計に作成を依頼した案であり、県が、日建設計が設計支援として出してきた案を認知しない限り生まれない話であります。現に県が独自に平成18年度の改修基本計画でまとめた案は全く別物であり、今回の新音楽学部棟計画は大学からの話を認知しない限りは生まれてこないはずの案件であることは明確であり、貴殿の発言はここにも虚偽があると思われますがいかがでしょうか。お答え下さい。



8)「改修」から「改築」へ

県と大学が水面下で動いてきたことは次のことでも明白です。県と大学は平成18年、 県が発注した「改修基本計画」の検討中に、同年12月28日に改修計画から改築計画に変更するよう受託設計事務所に指示が出されたことは、平成22年のビジョン検討会で竹内弘明県立芸術大学事務局長から提供されてきた資料(資料9)で明らかになっております。この文書もまた県と大学のやりとりがあることを明確に示しています。県の改修基本計画の作業中に、大学の施設整備委員会と県の作業が重なって行われており、法人の「芸術大学整備マスタープラン」計画の強い要請のもと、急遽「緊急整備対応指針」を用意して今問題になっている新音楽学部棟建設に着手せざるをえなくなったものだということは明らかであります。何故「改修」から「改築」に変えることにしたのか、答えて下さい。

*(資料9)については、「緑豊かな愛知芸大のキャンパスを活かしていこう会へお問い合わせください。


9)新音楽部棟の件は白紙

県が、法人が要望してきた箇所に新音楽学部棟を建てることのキャンパス全体に及ぼす問題点の精査を放棄し、富田昭雄議員が3月9日の議会で質問されたように、平成22年2月議会の後、貴殿が「新音楽部棟の件は白紙とし、改めて芸術大学施設整備ビジョン検討会で方向性」を検討するよう大学にしむけたことは、既に基本設計を認め、実施設計の予算承認がおりてからでは行政として本末転倒の話であり、貴殿の業務遂行責任が疑われるところであります。説明してください。また緊急対応という理由をつけてキャンパス建物の今までの県行政の維持管理の不備の実態をうやむやにしようとすることも、県民の税金の無駄使いそのものであります。何故県の業務不備の後始末を、県民がその税金を出して負担せねばならないのでしょうか、説明してください。


10)外人公舎解体

今回の外人公舎を壊す案件は全学では承認されていないと伝わってきています。また平成22年6月の中日新聞の「隠し計上」の記事(資料1)で、丹羽信昭県民生活部学事振興課課長補佐が「学生寮は解体後に新音楽学部棟工事の際に資材置き場にする予定なので、音楽学部棟整備費(実施設計)に入れた。議会に説明していないが、隠そうとしたわけではない。より分かりやすく書けば良かったと反省している。」との説明に関係していると思われ、県議会でも旧学生寮と一緒に、説明されることなく決定されてしまいました。これも行政の業務遂行責任が果たされていないというだけでは済まされない、何か不明の動向が見え隠れしています。何故なのか説明してください。

*(資料1)の記事については、「緑豊かな愛知芸大のキャンパスを活かしていこう会へお問い合わせください。


11)環境アセスメント

今回新音楽棟校舎基本設計を、環境アセスメントを事前にせずに発注したのは、COP10に臨もうとしていた県の環境政策からして大変おかしいことです。建設地一帯の環境への影響が事前と事後でどうなるか説明してください。


12)愛知県大学改革基本計画

平成18年3月に出された愛知県大学改革基本計画にある、「本県は、老朽化した芸術大学校舎の改修について、厳しい財政状況を踏まえ、年次計画を作成の上、貴重な芸術的資産の価値を損なわないことに配慮し、計画的な整備を検討する。」(資料10)のもとに対応されているとのことですが、今の各建物を成り立たせている構成の基本となっている当初のマスタープランそのものがあって、はじめて個々の建物が存在し得るのであります。

当初のマスタープランそのものの維持こそが、各建物の「芸術的資産の価値を損なわないこと」の大前提になるものであります。当初のマスタープランを無視することは、根本的な誤りであります。平成21年1月9日に愛知県立芸術大学施設整備委員会委員長の長谷高史教授が奥村昭雄を初めて訪ねられたとき、当初のマスタープランには、キャンパス北側のグリーン道路につながる北側の敷地をわざわざ使わずに残し、将来の第3学部構想にも備えた増設保留地が用意されていることが伝えられています。「貴重な芸術的資産の価値を損なわないこと」とは何か、建物それぞれを存立させるものは何によっているかを説明してください。

*(資料10)については、愛知県のHPからダウンロードできます。



以上各質問について3月30日(水)までに御返事して下さい。


(尚本公開質問状は次の各社にも伝えています。中日新聞、朝日新聞、東京新聞、NHKテレビ、CBCテレビ、中京テレビ、建築ジャーナル、名古屋C&Dフォーラム)