吉村隆子さんから神田知事への返信

2010/12/31

愛知県知事 神田真秋様


12月27日付けのお返事有難うございました。

知事用箋でもなく、御署名も知事印もないお手紙を受け取り、戸惑いました。

本当に知事閣下からのお手紙かと少々でも疑ってしまった事が間違いでしたら

大変な失礼をおわびいたします。

せっかく頂いたお返事ですが、後々に人々の間に悔恨の念がおこらないように

もう一度知事に訴えさせて頂きます。(この先、何十年後に今のキャンパスが現

存していたら必ず世界的に注目を受ける代表的近代建築作品となるはずです。

そしてこの様なユニークなキャンパスは世界随一となるでしょう。)

お返事の中で言われておられる「そこに大きな支障があるようでは、教育施設

としての目的は達成できないものと考えております。」とのお考えはまことにそ

の通りです。

しかし、それは現存の建物を修理、改修すれば立派に教育施設としての目的は

達成できるのです! 知事、是非そこの所をご理解ください。

これだけ多くの人々が建て替える前に修理、改修を考えて頂くように訴えてい

るのです。そのほうが、価値ある建物が生き返るし、予算も少なくて済みます。

そして、修理、改修された近代建築史上高く評価されているこのキャンパスは

見事に美しく生まれ変わり、注目を集めます。

今問題となっている音楽学部練習室の問題は、天井高の問題を除けばすべて改

修で解決可能です。弓の問題だって(細かい点を申し上げて恐縮ですが)ヴァ

イオリンの弓が天井につかえて困る場合は練習時にはほんの稀にしか起きない

現象です。現状の天井高で行う練習は立って弾くヴァイオリンの生徒にとって

でもほとんどの練習は可能です。感情移入して演奏会の為の準備をする時には

もっと高い天井の部屋が理想的ですがそんな練習は普段はしません。その事の

為に環境破壊の恐れのある場所に新しい校舎を建てるのでしょうか。

頂いたお手紙の中で大変気にかかったのは、以下の部分です。(引用します。)


天井高を始め遮音性能・必要面積の不足などを理由に、移転新築を計画し

ております音楽学部公舎については、検討会においても、「現状の施設を

改修したとしても音楽学部校舎として利用し続けることには無理がある」

と判断され、移転新築するとの結論に至ったものと承知しております。

県といたしましては、今後、ビジョン検討会で取りまとめられ、大学法人

から提出されることになる「芸術大学施設整備ビジョン」の内容をしっか

りと受け止め、県での検討も加え、施設の計画的な整備を図り、魅力ある

大学創りに努めることによりまして、責務を全うしてまいりたいと考えて

おりますので、ご理解をいただきたいと存じます。(引用ここまで)

検討会ではまだ「移転新築するとの結論に至ったものと承知しております。」と

いう結論には至っていないはずです。(12月17日 第8回検討会)知事の誤

認識を改めて頂きたくお願い致します。結論は3月の最終検討会までは出され

ないものと思われます。

私が、知事閣下に直接お手紙をお出ししたのは、知事御自身の英知と御判断に

より、いまある大学の現状をしっかりと把握されたのちご意見を出して頂きた

いと思ったからなのです。(私には検討会において移転新築を望む委員諸氏の強

引な会議の進め方が気になります。)

大学側も県の学事振興課のみなさんも大変な御努力とご尽力により、新校舎建

設の事をすすめておられるがために、それ以外の策は無いと考えていらっしゃ

います。大切な県税をより少なく使い、その上高く評価されている今の建物を

保存・改修すれば(そして足りないものを加える)愛知県立芸術大学は大変魅

力のある学生・教員にとって使い勝手の良い施設として生まれ変わる事が出来

るのです! 多くの専門家がそう言っています。(尚、必要とする個所の補修に

すぐに手を付けるように要請して下さい! 現状のままでは救い難い所まで行

ってしまいます。緊急課題です!


大学も県も新音楽学部校舎を新築する以外は今の所計画は無い、と言っていま

す。大変に危険な考え方です。刹那的に1つ1つの建物を考えて行くのは今あ

る建物を将来ほとんど失うことになります。今後のキャンパスの全体像が無い

限り、新しく建物を建設するのは自殺行為です。その事に大勢の人が危惧して

いるのです。

又、計画されている新校舎では、音楽学部すべての科の生徒の事が考えられて

いない(例;管・打楽器)と言う事もわかってきました。長い間この計画案が

公にされていなかった事に問題がある様です。

これ等の事に問題提起して頂けるのは知事閣下しかおられないので、悲痛な思

いを持ってお手紙を再度差し上げ、知事の再検討を是非お願いするものです。

どうか、将来禍根を残す事が無いように是非もう一度この問題をあらゆる角度

からご検討下さいますように心からお願い致します。

くどいようですが、万が一、今のキャンパスの姿が大きく変えられてしまった

場合、将来人々はこの時期に下された判断と経緯に大いなる痛恨を覚え、批判

すると思います。歴史的、グローバルな観点から捉えて見るとそう予測出来ま

す。

長くなりましたこの手紙を最後までお読み下さり有難うございます。

寒さ厳しき折りくれぐれも御自愛下さいますように。

最後に新しく迎えられる年が知事にとって幸多き年となりますようお祈りいた

します。

2010年 12月31日

吉村隆子

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