東京芸術大学美術学部建築科教員一同より建築群保全についての要望書

2010/10/07

愛知県立芸術大学のキャンパス及び建築群の保全についての要望書


 1964年、愛知県立芸術大学設立を発意された当時の県知事桑原幹根氏の要請を受け、

本学美術・音楽両学部教授会は構想作成の支援を致しました。そのなかで、美術学部建

築科はキャンパスとその建築群の設計を担当し、吉村順三を中心に、奥村昭雄以下、当

時の教授や助教授達が総力を結集して設計にあたりました。開学以来約半世紀を経て、

そのキャンパスと建築群は、近現代建築の保存に関する国際機関が認定した「日本にお

けるDOCOMOMO145選」に選ばれるなど,日本の芸術文化の創造環境として高い評

価を得るに至っています.

 吉村順三は、理念を言葉で語る建築家ではありませんでしたが、ピロティの上に建つ

講義棟が大学会館と学生ホールを対とする軸となり、ともに広場を形成する奏楽堂が、

さらに音楽学部と美術学部とを結ぶ軸をなす計画は、芸術大学のあり方を明快に示し、

密度高い設計がなされた一棟々々の建築や豊かさを増した自然とともに、既にキャンパ

ス全体が芸術文化資産といえるものです。

 愛知県立芸術大学は、このキャンパスと建築群を伴った愛知県民の芸術文化の象徴で

す。黎明期の近現代建築故の傷みや性能の十分とはいえぬ点などが少なからずあること

は否めませんが、今日の建築においては、公共であるか私設であるかを問わず、市民が

風景や光景を共有する建築は、可能な限り改修再利用することが当然と考えられていま

す。そして、愛知県立芸術大学のキャンパスと建築群は、適切に改修すれば、現代的な

芸術創作活動の要求に十分応える資産的価値を有しています。

 私たちは、愛知県と愛知県立芸術大学が、そのキャンパスと建築群の価値を十分に生

かした新しい施設のあり方を明確にする全体計画を再構想し、それに基づいて可能な限

りの活用的保全を考えていただくことを強く要望いたします。

                             平成22年10月7日


             東京藝術大学美術学部建築科教員一同  黒川 哲郎

                                元倉 眞琴

                               Tom Heneghan

                                                                              北川原 温

                                                             野口 昌夫

                                                          ヨコミゾ マコト

                                                              光井 渉

                                                             金田 充弘

 

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